山岸涼子が描く世界観の真骨頂は、時代劇というフレームを借りながらも、人間の本質的な孤独と愛を解剖する手腕にある。集英社の月刊誌で連載が始まった当初から、本作の異彩さは際立っていた。単なる善悪の二項対立ではなく、泥臭いまでの人間臭さと一筋縄ではいかない情愛が重厚に織りなされている。
過酷な身分制度と時代の波に翻弄されながらも、己の信念を曲げなかった登場人物たち。その姿は、現代に生きる私たちの心にも深く突き刺さる。愛するがゆえに傷つけ合い、執着するがゆえに手放さざるを得なかった男と女のドラマは、まさに大人のための格調高い文芸エンターテインメントと言えるだろう。