だが、ノスタルジーに浸る客側の視線とは裏腹に、店舗を維持する現場の現実は過酷を極める。近年の原材料費の高騰、光熱費の急上昇、そして避けては通れない店主の高齢化と後継者問題。多くの同業他社が暖簾を下ろす決断を迫られるなか、この店でも一時は「ここで幕を引くべきではないか」という深刻な議論が家族間で交わされていた。
廃業の危機を押しとどめたのは、常連客からの切実な声と、次世代の覚悟だった。「この味を自分の代で終わらせるわけにはいかない」。厨房に立つ後継者は、長年通い詰めてくれるドライバーや地域の住民の顔を思い浮かべ、継承への決意を固めたという。調理器具のメンテナンスを行い、仕入れルートを工夫しながら、創業時と変わらぬ価格帯とボリュームを維持するための地道な挑戦が今も続けられている。
単なる観光スポットとして消費されるのではなく、地域に根ざしたご当地大衆食堂としての本分を忘れない。その確固たる信念があるからこそ、厳しい経済状況のなかでも営業の灯を消さず、暖簾を守り続ける道を選び取ることができたのだ。