行司の世界において別格の存在とされるのが「立行司」である。その筆頭が木村庄之助、次席が式守伊之助の二大名跡だ。彼らは大相撲本場所の結びの一番を裁く特権を持つと同時に、帯刀を許された唯一無二の立場にある。この短刀は、万が一軍配を差し違えた際には切腹する覚悟を示すという武家社会の名残であり、精神的負荷は想像を絶する。
極限の重責に見合うだけの報酬は用意されている。立行司の月給は約40万〜50万円程度に設定されているが、これに加えて本場所ごとの手当や特別手当、装束の維持補助などが加算される。年収換算では1500万〜2000万円前後に達するとされ、一般企業の役員クラスに匹敵する待遇だ。しかし、この地位に就けるのは全行司の中でわずか2名のみ。40人前後の定員の中で40年以上におよぶ過酷な土俵人生を勝ち抜いた者だけに許された聖域である。