かつての渋谷における豚骨・家系シーンといえば、手軽に食べられるセントラルキッチン型のチェーン店が市場を席巻していた時代がありました。しかし現在の勢力図は、「店内仕込みの本物志向」へと明らかに回帰しています。本物のガラを寸胴で力強く炊き上げ、骨の髄から抽出した分厚い動物系出汁を提供する個人店や実力派独立店が、舌の肥えた渋谷のビジネスパーソンや学生から絶大な支持を集めています。
明治通り沿いや道玄坂の上り口付近で熱い視線を浴びる渋谷家系ラーメン人気店の現在を紐解くと、共通しているのは「カエシ(醤油ダレ)のキレ」と「フレッシュな鶏油の薫香」の徹底です。濃厚でありながら後味にしつこさを残さない絶妙なバランス感は、朝の仕込みから深夜の営業中まで、常に寸胴に付きっ切りで火加減を調整する職人の勘所によって支えられています。
また、渋谷豚骨ラーメン名店の真相を探る上で見逃せないのが、九州博多・長浜の血統を引く極細麺の老舗や、熊本ラーメンのルーツを伝える専門店の存在です。一部のネット掲示板などでは「観光客向けの味付けに日和ったのではないか」という穿った声も散見されますが、現場の取材で見えてきたのは真逆の事実でした。本場の獣臭を適度に残しつつも、現代の都市生活者がランチタイムに食べても重すぎないよう、背脂の乳化度合いを緻密にコントロールする「洗練の進化」がそこにあります。