亀戸天神の人混みを避け、静かに花と向き合いたい鑑賞派に向けて、都内には驚くほど質の高い穴場スポットが存在します。
筆頭に挙げられるのが、調布市に鎮座する國領神社の「千年乃藤(せんねんのふじ)」です。境内にそびえる一本のクモマツフジは、幾度もの落雷や戦火を生き延びてきた奇跡の神木です。延びやかに広げられた藤棚の面積は約400平方メートルにも及び、一本の幹から無数の花房が降り注ぐ光景は圧巻の一言。京王線布田駅から徒歩5分という好立地にありながら、地域に根差した穏やかな空気が保たれており、ベンチに腰掛けて心ゆくまで芳香を楽しめます。
都心部でスマートに楽しむなら、日比谷公園の藤棚ライトアップが隠れた名所です。霞ヶ関や有楽町に隣接する都会の真ん中で、鶴の噴水が配された雲形池のほとりにある藤棚がひっそりと花をつけます。夜間には周囲の街灯やライトに照らし出され、高層ビルのシルエットを背景に幻想的な紫の花弁が浮かび上がります。観光客の密集度が低く、仕事帰りや散策の途中にふらりと立ち寄れる贅沢なスポットです。
また、文京区の小石川後楽園の藤棚は、水戸黄門ゆかりの大名庭園に相応しい洗練された配置が特徴です。池のほとりに設えられた藤棚は、青々とした松の緑や朱色の通天橋と見事な調和を見せます。入場料が設定されている庭園であるため、過度な喧騒とは無縁の風雅な時間を過ごすことができます。
さらに、西多摩エリアに足を延ばせるなら、昭島市にある拝島大師 本覚院の樹齢数百年の藤の花(千歳の藤)は必見です。東京都の天然記念物にも指定されている野田藤で、幹周り数メートルに及ぶ古木が放つ生命力には圧倒されます。寺院建築の荘厳さと古木の調和は、都心の公園では決して味わえない深みを持っています。
もうひとつの注目すべきスポットは、文京区の根津神社におけるつつじと藤のコラボレーションです。根津神社といえば「つつじまつり」が有名ですが、つつじ苑のクライマックスを迎える4月中旬から下旬、境内の藤棚もちょうど満開を迎えます。燃えるような赤・ピンク・白のつつじの絨毯と、頭上にそよぐ淡い紫の藤が同一のフレームに収まる光景は、春の色彩の極致と言えます。