文字としての魅力を超えて、「㐂楽」の名を世に知らしめている最大の存在が、渋谷・道玄坂の路地裏「百軒店(ひゃっけんだな)」に佇む老舗中華麺店です。店舗の看板や伝票には「喜楽」と「㐂楽」の双方が用いられ、ファンの間でも親しみを込めて呼ばれています。
創業は昭和27年(1952年)。戦後の復興期から文化の発信地として栄えた渋谷において、初代店主が台湾ルーツの中華料理の知見を注ぎ込んで生み出した一杯が、今日の東京ラーメンシーンに計り知れない影響を与えました。大井町の「永楽」などと並び、いわゆる「揚げネギ系ラーメン」の直系レジェンドとして語り継がれています。
スープを口に含んだ瞬間に広がるのは、深煎りされた台湾産赤ネギ(エシャロット)の香ばしさとラードの重厚なコク。あっさりとしたクラシックな鶏ガラ・豚骨ベースの醤油清湯でありながら、現代の濃厚系ラーメンに一切引けを取らない分厚い旨味を有しています。流行の変遷に左右されず、頑なに創業当時の製法を守り続ける職人気質こそが、目の肥えた渋谷の大人たちを魅了し続ける原動力です。