SNSやデザイン関連のまとめ記事では「数字フォントはとにかく極太を選べばOK」という言説が散見されますが、これは現場のプロから見れば危険な誤解です。太字の数字を扱う際には、デザインの破綻を招く「3つの技術的落とし穴」が存在します。
第一の落とし穴は、プロポーショナル数字と等幅(タビュラー)数字の混同です。多くのデザインフォントは文字ごとに幅が異なる「プロポーショナル数字」を採用しています。たとえば「1」は横幅が狭く、「8」は広くなります。グラフィックの単体タイトルであれば美しく収まりますが、表組み(テーブル)や価格表、ランキング一覧でプロポーショナル数字を並べると、桁ごとの縦ラインがガタガタに崩れてしまい、可読性が著しく損なわれます。数値を縦に比較させるデザインでは、OpenType機能で「Tabular Figures(等幅数字)」が有効化できるフォント(MontserratやInter、Robotoなど)を選択するか、等幅設定を行うことが不可欠です。
第二の落とし穴は、和文テキストと組み合わせた際の「ベースラインのズレ」です。欧文フォントの数字を太字にして日本語の「円」や「位」の前に置いた際、欧文と和文の仮想ボディ(文字の枠線)の基準位置が異なるため、数字だけが不自然に沈んだり浮き上がったりして見えます。この数ピクセルのズレは、無意識のうちに閲覧者に「素人っぽさ」「怪しさ」を感じさせる要因になります。プロは必ず数字のY軸位置(CSSであれば`vertical-align`や相対配置、DTPソフトであればベースラインシフト)を微調整し、日本語の漢字と重心を厳密に揃えています。
第三の落とし穴が、前述した「カウンター(内部の白地)の消失」です。特に「%(パーセント)」や「¥(円マーク)」などの記号は、数字と同じ太字フォントで統一すると、斜線と丸がくっついて真っ黒な染みのようになってしまいます。プロのデザイナーは、数字本体は極太フォントを使いつつ、「円」や「%」はあえて1〜2ウェイト細いフォントを組み合わせ、数字の可読性を保護する階層構造を設計しています。