戸谷公人の生い立ちを語る上で欠かせないのが、偉大な実父の存在です。彼の父親は、昭和から平成にかけて数多くの名作アニメや洋画吹き替えで活躍した名声優の故・戸谷公次氏でした。
戸谷公次氏といえば、『機動戦士ガンダム』のカクリコン・カクーラー、『北斗の拳』のジャギ、『聖闘士星矢』のキャプリコーンのシュラ、『ドラゴンボールZ』のキュイなど、凄みのある悪役や個性派バイプレイヤーとしてアニメ史に名を残す名優です。しかし、公次氏は2006年2月に急性心不全のため55歳の若さで急逝。戸谷公人がまだ15歳という多感な少年期に、最愛の父との永遠の別れが訪れました。
父の背中を追うように芸能界入りした戸谷公人は、折に触れて父への深い尊敬を口にしていました。声優としての仕事に挑戦した際も、「父の名を汚してはならない」「父の生きた声優という世界で認めてもらいたい」という強い情熱を抱いていたと伝えられています。
しかし、名声優の息子という看板は、誇りであると同時に無言のプレッシャーでもありました。若くして後ろ盾を失った寂しさと、偉大な父の影を常に意識させられる葛藤は、彼の心象風景に少なからず影を落としていたと推察されます。