現代の感覚から見ると極めて珍しい「1人の夫に3人の妻」という関係性。なぜ宇髄天元は一夫多妻制を取っているのか、その背景には忍の一族に課せられた過酷な血の掟が存在します。
宇髄の生家は、明治維新によって忍の時代が終わりを迎える中で、時代に取り残され狂気に憑りつかれた忍者一族でした。一族の血筋を絶やさないこと、そして優秀な忍の血統を次世代へ確実に残すため、「当主は15歳になると、一族の相性を考慮して選ばれた3人のくのいちを娶る」という厳格なしきたりが代々義務付けられていたのです。
つまり、天元が自らの享楽や欲望のために女性を侍らせていたわけではなく、家督を継ぐ忍として課せられたシステムが発端でした。事実、須磨に関しては「もともと須磨の妹が嫁ぐ予定だったところ、須磨自身が天元に嫁ぎたいと泣き叫んで襖を突き破り、自ら志願して嫁入りした」という驚きの裏設定が公式ファンブックで明かされています。
しかし、天元が並の忍者と決定的に異なっていたのは、その掟に魂まで売り渡さなかった点にあります。天元の父は「部下も妻も使い捨ての道具」と見なす冷徹な人物であり、その過酷な訓練によって天元の兄弟9人のうち6人が死亡。生き残った弟も父と同じ冷酷な殺人マシーンへと変貌してしまいました。
「あんな人間には絶対になりたくない」と痛感した天元は、3人の妻を連れて一族を離脱(抜け忍)します。命を道具として扱う忍の価値観を根本から否定し、人間としての尊厳を取り戻すための逃亡劇でした。