従来の白肉種グレープフルーツを食べた際に感じる「ツンとした酸味」と「舌に残る苦味」の正体は、柑橘類に含まれる有機酸(クエン酸)と、ポリフェノールの一種であるナリンギン(naringin)やリモノイド類です。では、なぜメロゴールドにはあの嫌な苦味がほとんど存在しないのでしょうか。
背景にあるのは、遺伝子交配による緻密な品種改良の歴史です。メロゴールドは1958年にカリフォルニア大学リバーサイド校(UCR)の柑橘類育種プログラムにおいて、酸味のない無酸系ポメロ(文旦の一種)と、種を持つ二倍体のホワイトグレープフルーツを交配させて誕生しました。研究チームが目指したのは、グレープフルーツの豊かなアロマを保ちつつ、酸と苦味を劇的に抑制することでした。
育成実験の記録によると、メロゴールドは果実内の総酸度が一般的なグレープフルーツの半分近くまで抑えられており、苦味配糖体であるナリンギンの含有量も大幅に低減されています。測定器上の糖度そのものは11度〜13度前後と、極端な高糖度みかんと大差ない数値ですが、人間の舌は「糖度そのもの」よりも「糖酸比(糖度÷酸度)」によって甘味を強く知覚します。酸味と苦味がマスキングされないため、口に含んだ瞬間にダイレクトかつ mellow(まろやか)な甘みが広がる生理的メカニズムが成立しているのです。
さらに、栄養素と健康効果の観点からも非常に優れたプロファイルを有しています。免疫機能維持やコラーゲン生成を助けるビタミンCは1玉で成人1日分の推奨摂取量を優にカバーするほか、体内の余分な塩分排出を促すカリウム、腸内環境を整える水溶性食物繊維のペクチンが豊富に含まれています。爽やかな香りを構成するリモネンにはリラクゼーション効果も認められており、冬場のビタミン補給源として非の打ち所がありません。