延床面積12万㎡を超える大型モールでありながら、「なぜシネマコンプレックス(映画館)が併設されていないのか」という点は、地元住民や来訪者の間で長年議論されてきたテーマです。SNS上では「敷地面積が足りなかった」「アウトレットとの調整で断念した」といった憶測が散見されますが、商業開発の観点から真相を分析すると、極めて明確な経営戦略が浮かび上がります。
理由は、車でわずか約15分(北へ約6km)の距離に位置する「イオンモール三田ウッディタウン」の存在にあります。同施設にはイオンシネマ三田ウッディタウン(旧ワーナー・マイカル・シネマズ三田ウッディタウン)が既に核テナントとして稼働しており、北摂エリアの映画鑑賞需要を一手に担っています。
もしイオンモール神戸北に最新鋭のシネコンを建設した場合、直線距離でわずか数キロしか離れていない自社グループ店舗との間で激しいカニバリゼーション(共食い)が発生します。イオン側は「三田ウッディタウン=シネマとコミュニティ生活密着型」「神戸北=アウトレット連携による広域広域集客型エンタテインメントモール」という明確な役割分担を設定したのです。無駄な重複投資を避け、自社グループで商圏全体を包囲するこの緻密なドミナント戦略こそが、映画館が存在しない決定的な理由です。