過密な名古屋駅周辺を抜け出し、文化的な街歩きを楽しむなら名古屋レトロ純喫茶巡りに勝る体験はありません。その筆頭格が、東区泉に店を構える1949年創業の「洋菓子・純喫茶 ボンボン」です。名古屋老舗純喫茶ボンボン現在の様子を取材すると、真紅のベルベットソファ、ステンドグラスから差し込む柔らかい光、昭和のぬくもりを色濃く残す空間はそのままに、驚くべきことにケーキセットを今なお700円台から提供し続けています。
「良いものを、安く、毎日のおやつとして召し上がっていただきたい」という創業精神を守り続けるボンボンには、近所の高齢者が新聞を広げる隣で、レトロ建築に惹かれた若者や観光客が静かにプリンを味わう、理想的な世代間共存の風景が広がっています。
一方で、名古屋の喫茶史を語る上で避けて通れない異端の存在が、昭和43年創業、昭和区山手通の「喫茶マウンテン」です。全国の好事家から「奇食の聖地」と呼ばれ、完食することを「登頂」、食べ残すことを「遭難」と呼ぶ独自の登山用語を生み出したこの店。喫茶マウンテンメニュー真相は、単なる悪ふざけの産物ではありません。
代名詞となった「甘口抹茶小倉スパ」や「甘口いちごスパ」は、近隣の南山大学や名古屋大学の学生たちに「腹いっぱい驚きと満腹感を提供したい」という店主の飽くなき実験精神から誕生しました。太麺のパスタに抹茶粉末を練り込み、油で炒めて温かい生クリームと小倉餡をトッピングした一皿は、一口目は強烈な甘さと油のパンチに圧倒されるものの、不思議と記憶に刻まれ、再登頂(再訪)を志すファンが後を絶ちません。約300種類に及ぶメニュー群には通常のピラフや激辛カレーも存在し、学生たちの青春を支えてきた地域の包摂力こそが、この奇跡的な怪店を半世紀以上存続させてきた原動力です。