平塚の食文化を語る上で、絶対に外せないのが「平塚タンメン」という独自ジャンルだ。一般的に連想される野菜たっぷりの塩味タンメンとは大きく異なり、お酢の酸味が効いた透明なスープに白っぽいストレート麺、具材はシンプルに刻み玉ねぎのみという潔さが最大の特徴である。
中でも「花水ラオシャン本店」は、その聖地として連日長蛇の列を作る。カウンター越しに見える手際よい手捌きと、目の前に運ばれてくる丼から立ち上る酢の香りは、一度体験すると忘れられない強烈なインパクトを残す。自家製の自家製ラー油を途中で投入し、味の変化を楽しむのが地元流の嗜み方だ。
フードジャーナリストの井上順一氏は、「平塚タンメンの酸味とコクの絶妙なバランスは、戦後の復興期から地域の人々の健康と食欲を支え続けてきた食の遺産である」と解説する。シンプルだからこそ誤魔化しがきかない、職人のこだわりが詰まった一杯だ。