インターネット上の相談掲示板やSNSでは、死に水を巡る誤った俗説や親族間のトラブル相談が後を絶ちません。現場で特に問題となりやすい代表的な誤解を検証します。
誤解1:浄土真宗でも「みんなやっているから」と行ってしまう
日本で非常に門徒数が多い浄土真宗では、原則として死に水を行いません。これは単なるマナーの違いではなく、宗祖・親鸞の教えに基づく根幹的な教義によるものです。
浄土真宗では、阿弥陀如来の本願力によって、亡くなると同時に誰もが極楽浄土へ往生し成仏する(往生即成仏)と考えます。したがって、霊となって喉が渇く迷いの世界をさまようことはなく、現世の人間が追善供養として水を施す必要がないとされているためです。もし実家や菩提寺が浄土真宗である場合、親族が勝手に死に水を強行すると僧侶から注意を受けたり、法要で気まずい思いをしたりすることがあります。ただし、「儀礼ではなく故人への純粋な感謝の表現」として唇を湿らす程度であれば容認する寺院もあるため、事前に菩提寺へ確認するのが賢明です。
誤解2:唇を強く拭いたり、口の中に水を注ぎ込んでしまう
感情が高ぶるあまり、故人の唇をゴシゴシと強く擦ってしまったり、口を開けさせて水を流し込もうとする人がいます。逝去後の皮膚組織は極めてデリケートであり、強い摩擦を加えると表皮が剥離して変色の原因になります。また、口内に水分を溜めると、その後のご遺体搬送や安置の過程で口元から体液が漏れ出す重大なトラブルにつながります。「あくまでも脱脂綿を軽く触れさせるだけ」という看取りのマナーを守ることが、故人の尊厳を美しく保つ秘訣です。