サントリー「伊右衛門」のテレビCMを語る上で欠かせないBGMの正式タイトルは、世界的な作曲家・久石譲氏が手がけた「Oriental Wind(オリエンタル・ウィンド)」です。2004年春、サントリーが京都福寿園の茶匠の技を結集して世に送り出した初代「伊右衛門」の発売と同時に、この楽曲は全国のお茶の間へ届けられました。
当時の制作発表および関係者の証言によると、サントリー側からのオーダーは「新しい時代にふさわしい、本物の日本のお茶の味わいと情緒を表現してほしい」という極めて抽象度の高いものでした。これに対し久石氏は、日本の伝統的な雅楽の旋律や五音音階(ペンタトニックスケール)のエッセンスを取り入れつつ、西洋のミニマル・ミュージックやフルオーケストレーションを融合させるという革新的なアプローチで応えました。
久石譲氏が自著やインタビューで明かしている通り、この楽曲は「単なる和風の再現」ではなく、「アジアから世界を見つめる凛とした風」をイメージして構築されています。主演の本木雅弘さんが演じる初代伊右衛門の誠実な職人気質と、宮沢りえさん演じる妻の包み込むような優美さが、久石氏の奏でる繊細なピアノタッチと重厚なストリングスによって完璧な映像美へと昇華されたのです。