日本男子バレーが近年の国際舞台で強豪国と互角以上に渡り合えるようになった背景には、二人の偉大なセッターの存在があります。関田誠大選手と、2026年に31歳の若さで惜しまれつつ世を去った藤井直伸氏です。
関田選手のプレイスタイルの真髄は、「ブレないフォーム」と「アンダーハンドセットの超絶技巧」にあります。相手サーブでレシーブが乱され、ネットから大きく離れた位置へボールが飛んだ際、多くのセッターはオーバーハンドで無理に届かせようとするか、サイドへのオープン攻撃でお茶を濁しがちです。しかし関田選手は、低い姿勢から完璧にコントロールされたアンダーハンドトスで、逆サイドのバックアタック(パイプ攻撃)へ正確にボールを送り届けます。相手ブロッカーが「この乱れ球ならレフトオープン一本だろう」と予測した瞬間、中央からパイプ攻撃が突き刺さる光景は、龍神NIPPONの代名詞となりました。
一方、日本代表の攻撃オプションに劇的なパラダイムシフトをもたらしたのが藤井直伸氏の功績です。藤井氏は東レアローズや日本代表において、ミドルブロッカーの李博選手や小野寺太志選手らを積極的に活用。どんな悪条件のレシーブからでも「Bクイック」「Cクイック」を連続して使い、世界の巨砲ブロッカーたちを中央に釘付けにしました。かつて「日本はサイド中心の単調な攻撃」と見下していた海外勢は、藤井氏が構築した立体的な速攻バレーによって守備網を完全に崩壊させられたのです。
コート上で見せた藤井氏の情熱的な笑顔と、どんな劣勢でもミドルを信じ抜く配球哲学は、現在の日本代表の戦術的基盤として今なお息づいています。