真梨幸子の名を決定的に世に知らしめた金字塔といえば、徳間書店から刊行された『殺人鬼フジコの衝動』を挙げないわけにはいかない。一家惨殺事件の生き残りである少女が、いかにして稀代の連続殺人鬼へと変貌していったのか。凄惨な殺戮の記録でありながら、読者の共感をじわりと誘い出す狂気のロジック。文庫化を機に口コミで爆発的な広がりを見せ、累計発行部数は50万部を突破する怪物作となった。
この衝撃作は、後にHuluオリジナルドラマとして映像化され、尾野真千子が凄絶な演技でフジコを体現したことでも話題をさらった。文字で読んでも背筋が凍るエピソードの数々が、冷徹な映像美とともに視聴者を襲う。グロテスクな描写の奥にあるのは、愛されたい、認められたいというあまりに純粋で歪んだ承認欲求だ。彼女が描く怪物は、決して遠い世界の怪物ではない。一歩間違えれば自分自身がそうなっていたかもしれないという恐怖こそが、読者を底なしの沼へ突き落とす。