調理中に襲いかかる耐え難いかゆみは、アレルギーではなく純粋な物理的刺激によるものです。農林水産省や食品化学の学術研究資料によると、里芋の皮付近の細胞内には「シュウ酸カルシウム」と呼ばれる成分が凝縮されています。この結晶は顕微鏡で見ると無数の鋭利なトゲのような形状をした「針状結晶(しんじょうけっしょう)」をしており、皮を剥く際に破壊された細胞から飛び出し、人間の皮膚組織に突き刺さることで炎症とかゆみを引き起こします。
特に里芋特有の粘り気成分である粘液(ガラクタンやペクチンなどの複合体)が皮膚に密着することで、結晶がより深く食い込む悪循環を生み出します。この厄介な針状結晶には明確な弱点が2つ存在します。それが「熱」と「酸」です。
シュウ酸カルシウムは熱に弱く、一定以上の加熱によって結晶構造が崩壊・不活性化します。また、酸性水溶液に触れると容易に溶解する性質を持っています。そのため、調理前の手肌に少量の「食酢」や「レモン汁」をすり込んでおく、あるいは手袋を着用するといった事前防御を行うだけで、皮膚への刺入を劇的に予防できます。万が一かゆみが出た場合も、慌てて水でゴシゴシ擦ると結晶が深部に入り込むため、薄めた酢水や塩湯で優しく洗い流し、弱酸性のハンドソープで洗浄するのが皮膚科学的にも最も確実な対処法です。