読者の最大の関心事は、宇宙空間へとロケットで打ち上げられた栗まんじゅうが現在どうなっているのかという点です。原作の結末では、ドラえもんが小型ロケットに増殖する栗まんじゅうを詰め込み、宇宙の彼方へと発射して一件落着となりました。しかし、宇宙物理学の法則を適用すると、事態は解決するどころか全宇宙を巻き込む破滅的シナリオへと突入しています。
物質が増加し続けるということは、それに比例して総質量も指数関数的に増え続けることを意味します。質量が増大すれば、当然ながら物体同士が引き合う万有引力(重力)も凄まじい勢いで強化されます。ある天体の質量が一定の空間に過剰に密集すると、自らの強大な重力に耐えきれなくなって「重力崩壊」を起こし、光すら脱出できない天体、すなわちブラックホールが誕生します。
栗まんじゅうの集団がブラックホールを形成する限界半径(シュヴァルツシルト半径)を計算すると、増殖開始からおよそ1日足らずで臨界点に達します。宇宙空間に投棄された栗まんじゅうは、広大に拡散するのではなく、自らの重力によって中心へと急速に圧縮され、超大質量ブラックホールへと変貌します。
さらに恐ろしいのは、ブラックホールの内部(事象の地平面の向こう側)でもバイバインの増殖効果が持続している場合です。質量が5分ごとに倍増するブラックホールは、周囲の恒星や星雲、銀河系を猛烈な勢いで飲み込みながら巨大化を続けます。最終的には宇宙全体の質量バランスを崩壊させ、宇宙全体を1点へと収縮させる「ビッグクランチ」を引き起こす要因になり得ます。作中で何気なく描かれた宇宙追放は、宇宙規模の時限爆弾を解き放ったに等しい行為でした。