「24時間つけっぱなしの方が安い」という言説の真偽を一言で表すなら、「条件付きで半分正しく、半分は誤解」です。この現象を解明する鍵は、現代の空調機器に標準搭載されているインバーターエアコン消費電力の変動特性にあります。
エアコンが最も電力を消費するのは、部屋の温度を設定温度まで一気に引き下げる(または引き上げる)「起動からの約30分間」です。このピーク時には最大能力でコンプレッサーがフル稼働し、700W〜1,000W以上の電力を消費します。しかし、一度室温が安定すると、コンプレッサーは出力を落として低速回転に移行し、消費電力はわずか100W〜150W前後(一般的な液晶テレビやパソコンと同等程度)で推移します。
ダイキン工業をはじめとする空調大手各社の検証データによると、日中の30分から40分程度の買い物や外出であれば、電源を切って帰宅後に再び部屋を冷やすよりも、微小な電力で温度を維持し続ける「つけっぱなし」の方が積算電力量は低く抑えられます。これが30分以内の外出はつけっぱなしが推奨される技術的根拠です。
しかし、「30分〜1時間の外出時につけっぱなしにする方が得」という限定的な事実が、インターネットの口コミや要約サイトを経由する過程で「24時間ずっとつけっぱなしにした方が、夜間や日中に消す運用よりもトータルで安くなる」という極端な言説にすり替わって拡散されてしまいました。たとえアイドリング運転時の消費電力が小さくても、丸一日稼働させ続ければ24時間分の積算電力が確実に積み上がります。日中仕事で8時間以上留守にする世帯において、エアコンつけっぱなし電気代が「帰宅時のみ点灯させる運用」を下回ることは物理的にあり得ません。