市橋達也は逮捕後、獄中で自らの逃亡生活を克明に記録した手記『逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録』(幻冬舎)を出版しました。発売直後からベストセラーとなり、約1,000万円を超える多額の印税が発生したことで、世間では「殺人犯による商業主義」「被害者を冒涜している」と猛烈な批判が巻き起こりました。
これに対し、弁護団および版元は「印税は市橋本人の手元には一切渡らず、全額を被害者遺族への民事賠償金に充当する」という法的手続きを公表しました。民事裁判では遺族側への約1億3,000万円の賠償命令が下されており、手記の印税はその一部に充てられました。しかし、被害者の両親は「娘の命はお金では買えない」として、金銭の受け取りに強い葛藤を示し続けました。
さらに2013年には、手記を原作とした映画『I AM ICHIHASHI 逮捕されるまで』(ディーン・フジオカ監督・主演)が公開されました。凶悪犯の逃避行をエンターテインメントとして消費することへの倫理的議論が噴出する一方、犯罪者の心理的追いつめられ方や孤独を描いたドキュメンタリー的側面として、映像業界内外で大きな波紋を呼びました。