社会人野球の世界を語る上で見落としてはならないのが、「企業チーム」と「クラブチーム」の間に横たわる絶望的な格差、そして雇用形態の違いです。
前述のような高待遇を享受できるのは、日本野球連盟に登録されている企業チーム(全国に約100チーム前後)に所属する、一握りのエリート選手に限られます。これに対し、全国に250以上存在するクラブチームに所属する選手たちの生活環境は、180度異なります。
クラブチームの選手は、チームから給料が支払われることは基本的にありません。それどころか、年間数万円から十数万円の部費(登録料や遠征費の積み立て)を自腹で払いながら、平日の昼間は一般企業でフルタイム勤務やアルバイトをこなし、夜間や休日に球場へ集まって白球を追っています。都市対抗への出場権をかけて企業チームに挑むクラブチームの選手たちは、経済的メリットではなく、純粋な情熱と野球愛だけで過酷な二重生活を続けているのが実態です。
さらに、名門企業チームの内部でも「身分の二極化」が存在します。それは正社員選手と契約社員(嘱託・プロ契約)選手の格差です。
一部の企業では、独立リーグ出身者やドラフト候補の有力選手を即戦力として獲得する際、契約社員として採用するケースがあります。この場合、野球に専念できる環境が保障され、20代前半でもプロ並みの出来高給が設定されることがある一方、「チームから戦力外通告を受けたら即契約満了・退社」というシビアな条件が課されます。終身雇用が保証された正社員選手が引退後も社内に残れるのに対し、契約社員選手はクビを切られた瞬間に路頭に迷うリスクを背負っているのです。