タコスの起源はメキシコですが、沖縄のタコスはその歴史的背景から非常にユニークな道を歩んできました。メキシコの伝統的なタコスは、トウモロコシ粉(マサ)を薄く伸ばして柔らかく焼いた「ソフトトルティーヤ」に具材を包みます。一方、アメリカ本土に渡ったタコスは、大量生産に適したU字型の硬い「ハードシェル」へと姿を変えました。
戦後の沖縄にタコスが持ち込まれたのは、米軍基地周辺の飲食店が発祥です。1956年、沖縄市(旧コザ市)で創業した「チャーリー多幸寿」の創業者・勝田直吉氏が、米兵向けに提供されていたタコスを「日本人の舌に合うように」と改良を重ねたことが、沖縄タコスの歴史の幕開けとされています。
さらに1984年には、米兵たちにお腹いっぱい食べてほしいという思いから、金武町にある「キングタコス」の創業者・儀保松三氏によって、タコスの具材をご飯の上にのせた「タコライス」が誕生しました。米軍カルチャーを柔軟に取り込み、日本人の繊細な味覚に合わせてローカライズした結果、世界中どこを探しても見当たらない唯一無二の「沖縄タコス」という独立した食文化が完成したのです。