『サタデイ・ナイト』の代名詞である「S-A-T-U-R-D-A-Y NIGHT!」という掛け声は、偶然の産物ではなく、綿密に計算されたヒットの方程式によって生まれました。
作詞・作曲を手掛けたのは、英ポップス界の伝説的ヒットメーカーコンビであるビル・マーティン(Bill Martin)とフィル・コールター(Phil Coulter)です。彼らが着眼したのは、米国のハイスクールやカレッジフットボールにおける「チアリーディングの応援コール」と「スペリング・ビー(単語の綴りを一文字ずつ唱える競技)」でした。
マーティンは生前のインタビューで次のように証言しています。
「誰もが知っている単語をアルファベットで叫ばせれば、英語圏以外の子供たちも合唱できる。スタジアムで数万人が手拍子とともに叫べるキラーフレーズを作ること、それこそが狙いだった」
実は本作、1973年に初代リードシンガーのノビー・クラーク(Nobby Clark)のボーカルで英国リリースされた際には、全英チャートで圏外という屈辱的な惨敗を喫していました。当時はテンポが遅く、アレンジも泥臭いパブ・ロック調だったのです。
転機が訪れたのは1974年、18歳の若きレスリー・マッコーエン(Leslie McKeown)が新フロントマンとして加入した瞬間でした。プロデューサー陣はテンポを一気に引き上げ、ハンドクラップ(手拍子)を前面に押し出し、マッコーエンの瑞々しく少年ぽさを残したハスキーボイスで再録音を実施。この刷新こそが、世界的大爆発への起爆剤となったのです。