Production I.Gが手掛けた傑作『ハイキュー!!』において、烏養繋心という指導者の存在感は絶対的だった。坂ノ下商店の店番をしながらタバコをくゆらせ、かつての名将の孫という重圧を背負いながら泥臭くコートを見つめる男。彼にこれ以上ない説得力を与えたのが、田中一成の声帯だった。
白鳥沢学園との死闘を描いた『ハイキュー!! 烏野高校 VS 白鳥沢学園高校』第8話。劣勢に立たされ、足が止まりかけた選手たちへ向けて投げかけられた叫びがある。「下を向くんじゃねえええええ!!! バレーは!!! 常に上を向くスポーツだ」。喉が張り裂けんばかりの絶叫。このテイクの収録直後、彼は急逝した。スポーツアニメの歴史に残るこの一言は、劇中の烏野メンバーのみならず、画面の前にいたすべての表現者とファンの背中を永遠に押し続けるアンセムとなった。