現代の日本法において、お妾さんという関係はどう処理されるのでしょうか。民法90条は「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする」と定めています。したがって、「月々〇〇万円の手当を支払う代わりに、継続的な愛人関係を結ぶ」といった「妾契約(愛人契約)」は裁判規範上、絶対的無効です。支払いが滞ったからといって相手を民事提訴して生活費を請求することは一切できません。
一方で、手切れ金や過去の不法行為に対する慰謝料、あるいは生活困窮を防ぐための贈与については、条件付きで有効と判断される判例も蓄積されています。しかし、配偶者がいる身であれば当然ながら共同不法行為(不貞行為)が成立し、正妻・本夫から多額の慰謝料を請求される法的リスクを背負います。
さらに長年、日本社会で激しい人権論争の舞台となってきたのが「妾の子(非嫡出子)」の相続格差でした。かつての民法900条4号ただし書は、「婚姻関係にない男女の間に生まれた子(非嫡出子)の遺産相続分は、正妻の子(嫡出子)の2分の1とする」と露骨な差別を設けていました。
この構造を根本から覆したのが、2013年(平成25年)9月4日の最高裁判所大法廷決定です。最高裁は「生まれた子ども自身には何の責任もないにもかかわらず、法定相続分に格差を設けることは憲法14条1項の『法の下の平等』に反し違憲である」と断じました。これを受けて民法が即座に改正され、現在では父親が生前または遺言で「認知」していれば、正妻の子とまったく同等の相続権(1対1の割合)が保証されるようになっています。