皮膚科学の知見によれば、かかとには皮脂を分泌して油分膜を作る「皮脂腺」が一切存在しない。水分を保つ手段が極めて限られている構造に加え、全体重を支える継続的な圧迫がターンオーバーを狂わせ、角質細胞が何層にも積み重なる「角質肥厚」を引き起こす。
しかし、問題は物理的な要因だけにとどまらない。日本皮膚科学会の臨床現場でもしばしば指摘されるのが、水虫の原因となる白癬菌の潜伏だ。いわゆる「踵骨部角化症」と呼ばれる状態に陥ると、痒みを伴わないままかかと全体が分厚くガサガサに変貌する。自覚症状が「硬さ」や「粉ふき」だけであるため、通常の肌荒れと誤認したまま放置され、家庭内感染の温床になるケースも珍しくない。治らない頑固な硬化の裏には、目に見えない菌の増殖が隠れている可能性がある。