日本の伝統的な美人の立ち居振る舞いを形容することわざとして有名な「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花」。この言葉は単なる比喩ではなく、それぞれの植物の生態的特徴を完璧に言い当てた観察眼の結晶である。
芍薬は一本の真っ直ぐ伸びた茎の頂点に凛とした花を咲かせるため、すっきりと背筋を伸ばして立つ女性の美しい立ち姿に重なる。牡丹は横へと枝を広げ、どっしりと落ち着いた低木に豪華絢爛な花を咲かせるため、優雅に腰を落ち着けた座り姿を連想させる。そして風に揺れる百合がしなやかな歩行姿を表す。
近年の文化史研究でも、この表現は外見の造形美だけでなく、状況に応じて凛々しさと落ち着きを使い分ける内面的な気品を表現していたと再解釈されている。植物の形態がそのまま日本人の美意識へと昇華された好例だ。