空間の単位としての「一間」は、単なる建設現場の工業規格ではない。そこには数百年かけて磨かれた日本人の身体感覚と空間の哲学が宿っている。
安土桃山時代、茶道家・伝統建築設計の巨匠である千利休は、極小の茶室建築を通じて日本伝統建築・数寄屋造りの基礎を築いた。国宝の茶室「待庵(たいあん)」に見られる二畳隅炉の空間構成は、尺貫法(伝統計量単位体系)を極限まで研ぎ澄ませた身体寸法の結晶だ。大人が腕を広げ、膝を折り、茶を点てる。一挙手一投足に最適化された一間と半間の関係性が、緊張感と居心地の良さを同居させている。
建築・デザインドキュメンタリー番組『美の壺』(NHK)でも度々光が当てられるように、数寄屋造りの柱割りや畳の敷き詰めには、視線の抜けや光の陰翳を計算し尽くしたグリッドシステムが息づいている。西洋の建築が幾何学的な均等分割から空間を立ち上げるのに対し、日本の伝統空間は「畳一枚」「一間の開口」という人間の身体を起点にしたスケールから世界を広げていく。この尺貫法の美学が、今なお現代建築家たちの創作意欲を刺激し続けている。