火災の規模以上に世間に大きな衝撃を与えたのが、焼け野原となった駐車場に取り残された被害者たちの損害賠償と責任の所在をめぐる法的現実でした。常識的な感覚であれば「火元となった車の持ち主やメーカー、あるいは場所を提供していたパチンコ店舗が全額弁償してくれるはずだ」と考えがちですが、日本の現行法制度下では全く異なる結末が待っています。
その最大の壁となるのが、明治32年に制定された失火責任法の適用(失火ノ責任ニ関スル法律)です。
民法709条が定める一般的な不法行為責任では、過失によって他人に損害を与えた場合に賠償義務が発生します。しかし失火責任法では、木造建築が密集する日本の国情に配慮し、「失火者(火元)に重大な過失(重過失)がない限り、損害賠償責任を負わない」と明確に規定されています。
ここでいう「重過失」とは、「わずかな注意さえ払っていれば容易に結果を予見・回避できたのに、著しく注意を怠った状態」を指します。今回のケースのように、正規ディーラー等での点検を受けていた一般的なオーナーが、車両内部の構造的欠陥や遮熱マットの不備を予見することは極めて困難です。そのため、法的に火元車両のオーナーに重過失を問うことはできず、もらい火の弁償問題において被害者が火元オーナーから直接賠償金を受け取る道は事実上閉ざされました。
さらに、パチンコ店舗側の管理責任についても同様です。施設側が消防法に定められた設備点検を実施し、適切な避難誘導体制を整えていた場合、施設敷地内で起きた第三者車両の自然発火事故について、土地・建物工作物の設置保存瑕疵(民法717条)を問うことは極めて困難と判断されます。結果として、何百人もの被害者が「完全に巻き込まれた側」でありながら、誰からも直接の補償を得られないという深刻な事態に直面しました。