船村徹氏を語る上で欠かせないのが、多くの名歌手を育て上げた「船村学校(内弟子制度)」の存在です。昭和から平成にかけて、船村氏の自宅に住み込み、人間としての礼儀作法から歌の心までを叩き込まれた弟子たちは、演歌界の第一線で今も活躍しています。
なかでも、下積み時代から船村氏を師と仰ぎ、「風雪ながれ旅」などの名曲を授けられた北島三郎氏は、実質的な長弟子として深い絆で結ばれていました。訃報を受けた際、北島氏は「親父のような存在を失った」「先生の作った歌をこれからも命がけで歌い継ぐ」と声を詰まらせ、その喪失感の大きさを吐露しました。
また、元遠洋漁船の船員という異色の経歴から弟子入りし、「兄弟船」で鮮烈なデビューを果たした鳥羽一郎氏も、船村氏を「生涯の師父」と慕い続けた一人です。鳥羽氏は弟子時代、早朝の掃除や料理、師匠の身の回りの世話を長年務め上げ、歌のテクニック以上に「人間としての情」を教え込まれました。
2017年2月23日に東京都文京区の護国寺で営まれた葬儀・告別式には、北島三郎氏、鳥羽一郎氏、大月みやこ氏、細川たかし氏らをはじめとする音楽関係者やファンなど約1,000人が参列。喪主を務めた長男で作曲家の蔦将包(つた・まさかね)氏をはじめとする家族、そして門下生たちが涙ながらに見送る姿は、船村氏がいかに人々に深く愛されていたかを如実に示していました。