タイムパフォ―マンス(タイパ)という言葉が世を席巻してから数年。動画の2倍速視聴やAIによる要約サービスの利用は当たり前となった。しかし、2026年の消費動向を分析すると、まったく逆のベクトルが急速に勢力を拡大していることがわかる。
都内のIT企業に勤める30代男性は語る。「毎日、朝から晩までAIチャットと自動化ツールに追われ、情報の消化スピードだけが上がっていった。でも今年の春先、ふと自分が何を考えて生きているのか分からなくなったんです。それ以来、休日は通信波を遮断した喫茶店で、ただ温かいお茶の湯気を眺めて過ごす時間を義務付けています」
このような「意図的な立ち止まり」は、単なる個人のリフレッシュにとどまらない。都心の商業エリアでは、スマートフォンをポケットにしまわせる体験型店舗や、あえて「待ち時間」を長く設定したクラフトカフェが連日満員となっている。早ければ早いほど価値があった時代から、立ち止まること自体に価値を見出す時代への転換点が、いま訪れている。