かつて「西の陣陣、東の桐生」と称され、日本の輸出産業を支えた絹織物。その繁栄の影には、地域社会を結びつける強力なコミュニティの存在があった。戦後の高度経済成長期を経て、人々の生活に余暇とスポーツが定着し始めた頃、地域のアイデンティティをスポーツの場に投影する試みが始まった。それがシルクカップテニスの原点である。
地元の製糸業者や関連企業が協賛し、テニス協会の主導のもと設立されたこの大会は、当初は地元の限られた愛好家のための集いだった。しかし、質の高い大会運営と温かいおもてなしの精神が評判を呼び、隣接する都道府県からも選手が詰めかける大型トーナメントへと拡大を遂げた。糸を紡ぐ技術が精密さを求められるのと同様に、コート上で展開されるプレースタイルにも、正確性と粘り強さが宿っている。