「発達障害は母親と父親のどっちから遺伝しやすいのか」という疑問も頻繁に寄せられます。結論から言えば、現代の遺伝医学において特定の親(母親または父親)だけに偏って遺伝するという証拠はありません。
ただし、遺伝的変異の生じ方や発現パターンには性差に関するいくつかの特徴が報告されています。
・父親側の要素:父親の加齢に伴い、精子形成時の突然変異(de novo変異)の発生率がわずかに上昇することが分かっています。
・母親側の要素:ミトコンドリアDNAや胎内環境を通じたエピジェネティックな影響が研究されています。
・女性保護効果(Female Protective Effect):自閉スペクトラム症において、女性は男性に比べて同じ遺伝的変異を持っていても症状が表面化しにくい生体防御メカニズムが存在することが指摘されています。
また、上の子が発達障害と診断された場合、次に生まれてくるきょうだいが同じ特性を持つ確率は、ASDの場合で約10〜20%と報告されています。一般人口での発症頻度(約1〜2%)に比べると高まるものの、8割以上のきょうだいは定型発達であるという現実も同時に示しています。