五色台は本来、日本初の国立公園の一つである瀬戸内海国立公園の中核をなす名勝だ。白峰、紅峰、黄峰、青峰、黒峰という五色に由来する山々が連なり、弘法大師空海にまつわる霊場としても長い歴史を誇る。しかし、高度経済成長期に整備された観光用スカイラインが、やがて異なる表情を生み出すこととなった。
夜間になると街灯は極端に少なくなり、視界を奪う濃霧が頻繁に発生する。鋭角なカーブが連続するドライブコースは、かつてローリング族や夜間ドライブに興じる若者たちの溜まり場となった。スピードの出し過ぎによるスリップ事故や転落事故が多発し、凄惨な現場の記憶が「呪われた峠」というイメージを定着させていった背景がある。豊かな自然と歴史的な聖地性、そして近代交通の影が生み出した死角が、怪談の土壌を整えたのだ。