彼女のお茶の間での人気を決定づけたのが、NHK(日本放送協会)で放送されたバラエティ時代劇『コメディーお江戸でござる』だった。番組内の解説コーナー「おもしろ江戸百景」で見せた、軽妙洒脱な語り口を覚えている視聴者も多いはずだ。専門的な歴史用語を一切使わず、路地裏の長屋に暮らす人々の息遣いや、季節ごとの旬の味覚を生き生きと描写する手腕は唯一無二だった。
それまでの学術的で堅苦しかった江戸風俗・時代考証のイメージを、彼女は軽やかに覆してみせた。教科書に載る武士の政治史ではなく、名もなき市井の人々がどう笑い、どう恋をし、どう助け合って生きていたのか。NHKの画面を通じて届けられた彼女の言葉は、歴史を現代人の日常と地続きのものとして再発見させる極上のエンターテインメントだった。