10年間という歳月は、目まぐるしく変化する現代アートシーンにおいては「忘れ去られる」に十分な時間である。しかし、彼女の中で美への執念が潰えることはなかった。暗闇のただ中で始まったのは、1本の色鉛筆を用いた地道なリハビリテーションだった。
巨大なキャンバスに油絵具を叩きつける気力はなくても、卓上で小さな紙に向かい、目の前の一輪の花を色鉛筆でなぞることはできる。線と色が持つ生々しい手触りを取り戻す過程で、彼女の身体症状は奇跡的な緩和を見せ始めた。リハビリとして描かれたスケッチは、やがて彼女の表現力をより純化させ、画業復帰への決定的な足がかりとなったのだ。