「セイレーン」という名のキャラクターには、一般的なヒロインや悪役とは一線を画す「神聖さと毒の同居」が求められる。都内の大手音響監督は匿名を条件に次のように語る。「セイレーン役のオーディションでは、単に演技が上手いだけでなく、声そのものに『人を狂わせる説得力』があるかどうかが問われます。声の倍音成分や、吐息の混ぜ方ひとつで場面の緊張感がガラリと変わってしまうからです」。
そのため、この配役には若手ブレイク中の実力派から、数々の修羅場をくぐり抜けてきたベテラン声優まで、トップクラスの演技派が集中する傾向が強い。一筋縄ではいかない複雑な内面を持つ役だからこそ、演者の底力が試されるのだ。