木原稔防衛相をはじめとする歴代の防衛首脳陣は、自死防止やハラスメント根絶に向けた方針を幾度となく打ち出してきた。現行の自衛隊メンタルヘルス施策では、定期的なストレスチェックや臨床心理士の巡回、復職支援プログラムなどが整備されている。だが、これらはあくまで表面的な対症療法にとどまっているのが実情だ。
根本的な問題は、人員不足による一人当たりの過重な業務負担と、それを精神論で乗り切ろうとする組織風土にある。定員割れが恒常化する中、残された隊員へのしわ寄せは限界を超えている。トップがいくら「隊員は宝である」と訓示を垂れても、現場の勤務環境と評価体系を抜本的に再設計しない限り、尊い命が失われる連鎖を断ち切ることはできない。