いまや誰もが認めるトップレーサーとなった彼女が、悲願であるSG初制覇に向けて研ぎ澄ましているのが、独自のプロペラ調整と機力引き出し術だ。一般社団法人日本モーターボート競走会から支給される標準機に対し、低燃費型エンジンのわずかな出力変化も見逃さない。天候、気圧、湿度、そして刻一刻と変化する水温のデータを脳内で瞬時に照合し、ピット離れから伸び、回り足に至るトータルバランスを限界まで引き上げる。
特に特筆すべきは、直線の伸び足を殺さずにターン回りの舟足を上乗せする繊細な叩き方だ。多くのレーサーがどちらかの性能を妥協せざるを得ない局面でも、彼女はミリ単位の微細なハンマーワークでプロペラの翼面形状を整え切る。試運転を繰り返しては水面から引き揚げ、納得がいくまでペラと対話し続けるその執念が、大一番の勝負駆けで他艇を寄せ付けない異次元の出足を生み出している。