寺島しのぶの存在は、男系継承が基本とされる歌舞伎の伝統において、極めて刺激的な風を送り込んでいる。自身の舞台への情熱は、長男である尾上眞秀の育成へと注がれた。日仏ハーフの少年が初代・尾上眞秀として初舞台を踏んだ瞬間、客席からは割れんばかりの拍手が送られた。
フランス語と日本語を操り、豊かな感受性としなやかな身体性を持つ眞秀の存在は、音羽屋の血統にまったく新しい可能性をもたらしている。母・しのぶの徹底したリアリズムの演技観と、祖父・七代目 尾上菊五郎から受け継ぐ伝統の型。この二つが融合したとき、歌舞伎は世界基準の舞台芸術へとさらなる進化を遂げるに違いない。