日本美術史において、彼が遺した作品群は極めて特殊かつ独自の立ち位置を占めている。世間の一般的なイメージでは「旅先でスケッチブックを広げ、その場でおにぎりを食べながらちぎり絵を描いていた」と思われがちだが、実際の制作プロセスは全く異なる。彼は放浪中、画材や紙をほとんど持ち歩いていなかった。
彼があの緻密で色彩豊かな「ちぎり絵」を制作したのは、旅を終えて八幡学園に戻った後や、落ち着いた自宅の作業場においてであった。一度目にした景色の細部、建物の瓦の枚数、人々の衣装や佇まいに至るまでを完璧に脳内に記憶し、驚異的な映像記憶(カメラアイ)によって再現。ちぎった色紙を寸分の狂いもなく貼り合わせていった。その圧倒的な構成力と細部への執着は、現代の美術評論家からも高く評価されている。