「ロースト(Roast)」という言葉がエンターテインメントの文脈で使われ始めたのは、20世紀初頭のアメリカにさかのぼる。発祥の地となったのは、ニューヨークの会員制社交クラブ「ニューヨーク・フライヤーズ・クラブ」だ。名誉あるゲストを招き、仲間内だけで愛のある辛辣なからかいを交わしながら敬意を表すプライベートな宴会形式として誕生した。
「相手を傷つけるためではなく、称えるために火であぶる(ローストする)」。この精神こそが、伝統的なローストコメディの根底に流れる哲学だ。かつては閉ざされた社交界の余興に過ぎなかったこのスタイルは、やがてスタンドアップコメディの腕利きたちが集う公開イベントへと発展し、HBOなどのケーブル局を通じて広くお茶の間へと浸透していった。