日本国内における彼女への風当たりと、中華圏での熱烈な崇拝ぶりとの間には、驚くほどの温度差が存在します。中国のSNS・微博(ウェイボー)等で彼女は今もなお「酒井法子(ジウジン・ファーズー)」として敬愛され、巨額のビジネスを生み出し続けています。その理由は単なるノスタルジーにとどまりません。
発端は1990年代に遡ります。ドラマ『星の金貨』のアジア全域での大ヒットや、日立製作所の中国向けテレビCMソングへの起用により、中国の人々が「初めて触れた完璧な日本の美の象徴」としての地位を確立しました。当時の中国では日本のポップカルチャーが爆発的な憧れの対象であり、彼女の清純で可憐な笑顔は一世代の青春の記憶そのものとして深く刷り込まれたのです。
さらに重要なのは、文化的な「過ちに対する受容構造」の違いです。日本の芸能界とスポンサー文化が「一度の薬物スキャンダルに永遠の烙印を押す」傾向が強いのに対し、中華圏のファン心理には「青春の偶像が苦境に立たされたのだから、私たちが支えて恩返しをする」という強い情緒的連帯感が働きました。自著の手記の中国語版出版や現地でのチャリティ公演を通じて真摯に頭を下げる姿に現地の人々は胸を打たれ、スキャンダルを経てなお「アジアの伝説的歌姫」としてのブランド価値は揺らぎませんでした。