青ペンを用いた記憶術の代名詞とも言えるのが、大手予備校・早稲田塾の創業者である相川秀希氏が提唱した「青ペン書きなぐり勉強法」です。著書を通じて世に広まったこのメソッドは、難関大学への逆転合格者を続出させたことで一躍脚光を浴びました。当時の塾生たちが実践したルールは極めてシンプルであり、「青いゲルインキボールペンを使うこと」、そして「ノートではなくA4用紙や見開きノートにひたすら書きなぐること」の2点に集約されます。
相川氏の手記や指導記録によると、この手法が生まれた背景には、生徒たちの「目に見えない努力をいかに可視化するか」という指導現場の切実な課題意識がありました。一般的な黒鉛筆やシャープペンシルでは、芯の減りが遅く、自分がどれだけの量をこなしたのかを直感的に把握できません。そこで選ばれたのが、インクの減りが早く、残量が外から確認できる透明軸のゲルインキボールペンでした。
使い切った替芯や空のペン軸を捨てずにストックしていくと、1か月、3か月と経つうちに数十本から百本を超える「努力の結晶」が机上に積み上がります。受験本番という極限のプレッシャーに晒された際、生徒たちを最後に支えるのは根拠のない自信ではなく、「これだけの青ペンを消費した」という物理的な事実です。精神論を形骸化させず、日々の行動量をそのまま自信へと変換する極めて実践的な行動経済学的アプローチが、この勉強法の根底に流れています。