下茹でが完了した栗を甘露な煮汁で満たしていく段階で、味の決め手となるのが糖度のコントロールです。ここで失敗しないための基準値を押さえておく必要があります。
栗の風味を損なわず、かつ保存性を担保する砂糖の黄金比率は「下茹で後の正味栗重量に対して50%〜60%」です。例えば下茹で後の栗が500gであれば、砂糖は250g〜300gが理想です。甘さ控えめに仕上げたい場合でも40%を下回ると日持ちが極端に悪くなり、逆に70%を超えると栗本来の繊細な風味が砂糖の甘さに覆い隠されてしまいます。
プロ直伝の煮崩れ防止において、徹底すべき実践手順は以下の通りです。
砂糖は決して一度に入れてはいけません。全体の砂糖を3回に分けて投入するのが鉄則です。1回目に1/3の砂糖を加え、クッキングシートで落とし蓋をして弱火で15分ほど煮てから火を止めます。ここで急激に加熱を続けず、一度完全に冷めるまで放置して味を含ませます。料理家の大原千鶴氏も説くように、煮物は「冷めていく過程」で中心部まで糖分が浸透します。
クラシルの調理検証レポートでも実証されているように、煮崩れを防ぎながら芯までなめらかで照りのある仕上がりにするためには、「初日に砂糖を含ませて一晩休ませ、翌日に残りの砂糖を加えてさらに40分〜1時間弱火で煮詰める」という2段仕込みが非常に高い効果を発揮します。時間を味方につけることで、皮がパンと張りながらもスプーンがスッと入る極上の柔らかさが生まれます。