「マシンとは皮膚の響きが違う。手彫りは、彫師と受け手の呼吸が合致した瞬間にしか生まれない墨の深みがあるんです」
今回、独占取材に応じた大阪のベテラン彫師は、伝統的な「手彫り(てぼり)」の技法についてそう語る。竹棒や金属棒の先に密に並べられた針を、独特のテンポで肌に打ち込んでいく作業は、まさに極限の職人技だ。一針ごとに墨が真皮層へ定着し、年月を経るごとに肌と一体化して独特のグラデーションを生み出す。
日本全国を見渡せば、横浜の重鎮である三代目彫よし氏をはじめ、歴史に名を刻む巨匠たちが各地域で独自の流派を築いてきた。そのなかで大阪府を中心とする関西の彫師たちは、粋(いき)と豪快さを併せ持つ独特の作風を磨き上げてきた経緯がある。体のラインをダイナミックに生かした構図の取り方は、浪速の職人ならではの美的感性の賜物と言えるだろう。