『鬼滅の刃』という作品が他のダークファンタジーと一線を画す最大の理由は、主人公・竈門炭治郎の「敵に対する深い慈悲」にある。そしてその慈愛の演出が最も美しく結実したのが、冨岡義勇によって頸を斬られ、灰となって消えゆく累の最期であった。
炭治郎は、消滅していく累の背中に静かに手をおき、その溢れ出る悲しみの匂いを包み込んだ。自らの罪を自覚し、消滅の瞬間に父母の幻影と再会して涙を流す累。鬼を単なる成敗すべき悪として切り捨てるのではなく、かつて人間であった哀しき存在として悼む――炭治郎の刀がもたらしたのは、単なる死ではなく「魂の救済」だった。