ファンの間で長年囁かれ続けているのが、「力士はハゲたら引退しなければならないのか」という疑問だ。結論から言えば、日本相撲協会の規定に力士の薄毛やハゲによる引退基準という明確な条文は存在しない。頭髪の量そのものを理由に協会から強制解雇されるような規約はないのが実情だ。
ただし、力士規定において「土俵に上がる者は髷を結うこと」が前提とされているため、力士が髷を結えない場合はどうなるのかという問題は常に付きまとう。頭頂部が薄くなった力士であっても、後頭部や側頭部に髪が残っていれば、専門職である床山(とこやま)が神業のような技術を駆使して髪を集め、見事な髷へと仕上げる。相撲界ではこれを親しみを込めて「床山泣かせ」と呼ぶこともあるが、職人の手によって土俵に立ち続けた力士は歴史上数多く存在する。
一方で、頭髪の減退はベテラン力士にとって加齢や体力の衰えと時期が重なることが多い。髷の乱れや結びづらさが際立ってきた際、力士自身が自らの引き際を悟り、自発的に現役を退くケースがほとんどだ。強制的な引退勧告ではなく、力士としての尊厳と美学がその決断を後押ししている。