劇中冒頭で響き渡る名曲「アシタカ記」は、作曲家・久石譲が宮崎駿監督の過酷なまでの情熱に応えて生み出した至高の映画音楽だ。長年コンビを組んできたふたりだが、この作品における打合せは緊張感に満ちていたという。宮崎監督が求めたのは、主人公アシタカの理不尽な運命と、それでも生き抜く意思の双方を象徴する悲壮かつ壮大な主題歌だった。
「アシタカ記」のメロディは、冒頭では低音のオーケストラによって静かに奏でられ、徐々に波のように膨らんでいく。画面に映し出されるのは、エミシの村を襲う狂暴なタタリ神の影だ。映像が語るのは恐怖でありながら、音楽は畏怖と哀愁を伝える。この視覚と聴覚のコントラストこそが、宮崎駿と久石譲が計算し尽くした演出意図に他ならない。